特別支援学級の児童生徒数が増えていること
20年間で約4.3倍
平成16年度から令和6年度の20年間で、特別支援学級に在籍する義務教育段階の児童生徒数は9.1万人(全体の0.8%)から39.5万人(全体の4.3%)と激増しています。
これはどういうことでしょうか。障害のある児童生徒がこの20年間で生物学的に4.3倍になったとは考えられません。
「特別支援教育の現状に関する基礎資料(文部科学省,2026)」によると、弱視・難聴・肢体不自由・病弱/身体虚弱・言語障害を要因とした児童生徒数に大きな変化はありません。肢体不自由などは微減となっています。明らかに増えているのは、知的障害と自閉症・情緒障害です。
知的障害と自閉症・情緒障害は増えているのか
特別支援学級に在籍している児童生徒数が増えています。では、本当に、生物学的に増えているのでしょうか。鷲見(2022)は自閉スペクトラム症を例に挙げて、増加の要因を3つに分類しています。
自閉スペクトラム症が増加している要因(鷲見,2022)
1.見かけ上の増加
・診断に関する要因(基準の拡大と診断名の置き換え)
・発見方法に関する要因
2.真の増加
・生物学的要因(出産の高齢化、環境汚染物質の影響、低出生体重児の増加)
・養育環境の悪化(親子関係の変化、長時間のメディア視聴、家族制度の変化、地域社会の変化)
3.社会の許容度の低下
知的障害の増加においても類する考え方で捉えることができます。
障害のある子どもの多い学校と少ない学校
特別支援学級に在籍する児童生徒は、いわゆる「障害のある」子どもたちということになります。全国的な増加は前述の通りですが、学校ごとに見てみると全然違ったりします。中には、(小規模校ですが)全児童数のうち半分が特別支援学級に在籍しているというケースなどもあります。50%が障害のある子どもである、という状況を学校、保護者、地域はどう捉えているのでしょうか。
WHOの発出しているICF(国際生活機能分類)では「障害の社会モデル」が提唱されています。障害とは参加や活動ができない状況を指し、個人因子と環境因子の相互作用によって生じるものである、つまり環境によって障害であるかどうかが変化するという考え方です。これは、それまで障害を個人に帰結していた医療モデルからの大きな転換でした。例えば、私は視力が0.03ですが、視覚に障害があるとは言いません。理由は、メガネやコンタクトレンズという技術がある社会に生きていて、それを手に入れられる環境があるためです。もしこれが、縄文時代であれば、同じ個人の能力でも「障害」になるわけです。
改めて、障害のある子どもの多い学校と少ない学校について考えてみます。「障害となる環境の多い学校と少ない学校」である可能性も考えるべきではないでしょうか。もちろん、特別支援学級に在籍することが必要な児童生徒がいることを前提とした上で。
変わる社会と変わらない学校
社会は変化しています。その中で、障害の定義や「障害」とは何か、ということさえも変わってきているのです。特別支援学級に在籍する児童生徒数が増加しているということは、通常の学級に在籍する児童生徒数が減少しているということです。これはインクルーシブ教育に逆行する、分離教育が進んできている危機的状況であるとも言えます。
変わる社会に対して、変わらない学校。その差がもう社会全体で許容できない程度まで来ているのではないでしょうか。不登校を含め、「特別」である子どもの増加はそれを示しています。むしろこの状況は、子どもたちからの強烈なメッセージであるとも言えます。学校は変わらなければいけません。それも、表面上ではなく、学校とは何かという根本的なことから考え直す必要があります。
では、どうしたらよいのか。子どもたちと一緒に考えていくしか方法はありません。障害の有無に関わらず、誰もが参加・活動できる学校づくりをする先に答えがあるのではないでしょうか。