合理的配慮とは?学校現場での実践方法

 「合理的配慮」という言葉を耳にする機会が増えています。2016年に施行された障害者差別解消法により、学校を含む公的機関は障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されました(私立学校は2024年から義務化)。本記事では、合理的配慮の意味と学校現場での具体的な実践方法について、特別支援教育の観点から解説します。

合理的配慮とは何か

 合理的配慮とは、障害のある人が他の人と同等の機会や権利を享受できるよう、その人の必要性に応じて行われる変更・調整のことです。「合理的」とは、配慮した結果のパフォーマンスを示すものではなく、配慮を提供する側、される側におけるあらゆる意味での合理性という意味です。障害のある人の権利保障を中心に、対話を通して「合理的」な配慮の内容を決めていきます。

ポイント:合理的配慮は優遇ではありません。障害のある人もない人も同じスタートラインに立てるようにするための「環境づくり」です。視力の低い人が眼鏡やコンタクトレンズをして授業を受けることと同様に、学習上の困難のある子どもに適切な支援を提供することは、インクルーシブな社会をつくる主体となる行為でもあります。

学習障害(LD)と合理的配慮

 学校現場で合理的配慮が求められる場面のひとつが、学習障害(LD:Learning Disabilities)のある子どもへの対応です。学習障害とは、全般的な知的発達に遅れはないにもかかわらず、読む・書く・計算または推論するといった能力のいずれかに著しい困難を示すことです。

読み書き困難(ディスレクシア)

 読み書き困難(発達性ディスレクシア)は、学習障害の中でも最も多く見られるタイプのひとつです。文字の読み取りに困難があったり、文字を音に変換する処理(音韻処理)に困難があったりする状態です。知的能力は標準的なのに、文字を読むことが極端に苦手という特徴があります。

 読み書き困難のある子どもへの合理的配慮として、次のようなものが考えられます。

合理的配慮の実践プロセス

 学校での合理的配慮は、本人や保護者からの申出を受けて、学校側と話し合いながら決定するプロセスをとります。

ステップ1:ニーズの把握

 どのような困難があるのか、どのような支援があれば学習参加ができるのかを、保護者・本人・担任・特別支援教育コーディネーターなどが話し合い、具体的なニーズを把握します。学校での観察記録や、医療機関・専門機関からの診断書・意見書なども参考にします。

ステップ2:配慮内容の検討

 ニーズに対応する配慮内容を検討します。その際、学校の実情(人員・設備・授業形態など)も考慮した上で、「過度な負担にならない範囲」で可能な支援を洗い出します。

ステップ3:合意と実施

 検討した配慮内容について保護者・本人と合意し、個別の教育支援計画や個別の指導計画に記録します。その後、合意した配慮を実際に提供します。

ステップ4:評価と見直し

 提供した配慮が合理的であるかどうか定期的に評価し、必要に応じて内容を見直します。子どもの成長や状況の変化に合わせて、柔軟に調整することが重要です。

現場の目線:保護者からの申出に向き合うときに大切にしていること

 これまで保護者からの申出に向き合ってきた経験を通して最も重要だと思うのは、まず保護者の思いをしっかり聞くことです。「どんな配慮をするか」という具体的な話に入る前に、保護者が何を課題だと考えているのか、わが子にどう育ってほしいと願っているのかを、きちんと理解する必要があります。最初から結論を急ぐと、保護者の本当の心配ごとを見落としてしまうことが少なくありません。

 そのうえで必ず確認するのが、本人がどうしたいのかです。合理的配慮は、まわりの大人が良かれと思って一方的に用意するものではありません。本人が望まない配慮は、長い目でみると力が伸びない原因になることもあります。そこで、本人の言葉を丁寧に引き出し、その本人の言葉を通して、保護者と「本人にとって一番大切なことは何か」を対話を重ねながら一緒に考えるようにしています。配慮の主役はあくまで子ども本人であるという点を保護者と共有できると、その後の支援はぐっと進めやすくなります。

ふりがな付与:求められることが多い配慮のひとつ

 読み書き困難のある子どもへの配慮として、プリントやテストへのふりがな付与は求められることが多い配慮のひとつです。

実践例:テスト・プリントへのふりがな付与

 通常の学級での定期テストや日常のプリント学習において、読み書き困難のある特定の生徒に対して、同じ問題のふりがな付きバージョンを用意します。問題の内容や評価基準は他の生徒と同様で、読みのアクセシビリティのみを変更するため、公平性も保たれます。

 以前は、ふりがな付きの教材を作成するためには、一字一字手作業でふりがなを付けるか、Wordのルビ機能を使う必要がありました。これは時間がかかる作業であり、多忙な教師にとっての負担になっていました。

ふりがなメーカーで簡単にふりがな付与

E-eduの「ふりがなメーカー」を使うと、既存のPDFファイルに自動でふりがなを付けることができます。学年別フィルターで対象学年に合わせた漢字にのみふりがなを付ける機能もあり、テスト・プリントへの合理的配慮が大幅に効率化されます。

ふりがなメーカーを使ってみる →

読み上げ支援:文字を読む負担を軽減する

 ふりがな付与に加えて、音声による読み上げ支援も有効な配慮となる場合があります。テスト監督者が問題文を読み上げたり、音声読み上げソフト(テキスト・トゥ・スピーチ)を活用したりすることで、文字を読むことへの困難を大幅に軽減できます。

 特に、ディスレクシアの特性が強い場合、ふりがながあっても文字の読み取り自体に困難が残ることがあります。そのような子どもにとって、音声読み上げによる支援は学習参加を大きく促進します。

よみあげメーカーで音声読み上げ教材を作成

E-eduの「よみあげメーカー」を使うと、PDFに音声読み上げボタンを配置したHTMLファイルを作成できます。生徒が自分のペースでボタンを押して必要な部分を聴くことができ、自立的な学習支援ツールとして活用できます。

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合理的配慮の広がり:インクルーシブ教育へ

 合理的配慮の提供は、障害のある子どもを一般の教育システムで包摂するインクルーシブ教育(inclusive education)の実現に向けた重要な要素です。インクルーシブ教育とは、障害の有無にかかわらず、すべての子どもが一般教育を受ける権利を保障される教育のあり方です。

 ただし、インクルーシブ教育は単に「同じ教室に一緒にいること」ではありません。それぞれの子どもが、その子に合った方法で学習に参加し、成長できる環境を整えることが本質です。合理的配慮は、その環境づくりのための具体的な手立てといえます。

現場の目線:周りの子どもが「ずるい」と言うとき

 特定の子どもに配慮を行うと、周りの子どもから「ずるい」という声が上がることを心配する先生は少なくありません。しかし筆者の経験から言えるのは、自分自身が満たされている子どもは、「ずるい」とは言わないということです。「ずるい」という言葉の裏には、「自分も困っているのに見てもらえていない」という別のサインが隠れていることがあります。

 大切なのは、「必要な人に、必要な配慮があるのは当たり前」という価値観を、日頃の学級づくりの中で育てておくことです。そしてその土台となるのは、すべての子どもが「自分も困ったときには、必要な配慮を相談していいんだ」と思える安心感です。配慮は特別なものではなく、誰もが必要に応じて必要な配慮を受けられるということが認識されている学級であれば、「ずるい」という声は自然と出にくくなります。合理的配慮を考えることは、結局のところ、クラス全員が安心して学べる場をつくることにつながっているのです。

まとめ

 合理的配慮は、障害のある子どもたちが等しく学びにアクセスするための権利であり、学校には提供する義務があります。ふりがな付与や読み上げ支援は、比較的取り組みやすく効果的な配慮のひとつです。E-eduのツールを活用することで、これらの配慮を効率的に実践することができます。

 「すべての子どもたちが学びやすい環境を」というE-eduの目標のもと、今後も現場で役立つ情報とツールを提供してまいります。